砕かれた者の祈り

ヨナ書 2章

 1節 ヨナは魚の腹の中から、彼の神、主に祈って、
 2節 言った。
    「私が苦しみの中から主にお願いすると、
     主は答えてくださいました。
     私がよみの腹の中から叫ぶと、
     あなたは私の声を聞いてくださいました。
3節  あなたは私を海の真中の深みに
    投げ込まれました。
    潮の流れが私を囲み、
    あなたの波と大波がみな、
    私の上を越えて行きました。
4節  私は言った。
    『私はあなたの目の前から追われました。
           しかし、もう一度、私はあなたの聖なる宮を
           仰ぎ見たいのです。』と。
5節  水は、私ののどを絞めつけ、
    深淵は私を取り囲み、
    海草は私の頭にからみつきました。
6節  私は山々の根本まで下り、
    地のかんぬきが、
    いつまでも私の上にありました。
    しかし、私の神、主よ。
    あなたは私のいのちを
    穴から引き上げてくださいました。
7節  私のたましいが私のうちに衰え果てたとき、
    私は主を思い出しました。
    私の祈りはあなたに、
    あなたの聖なる宮に届きました。
8節  むなしい偶像に心を留める者は、
    自分への恵みを捨てます。
9節  しかし、私は、感謝の声をあげて、
    あなたにいけにえをささげ、
    私の誓いを果たしましょう。
    救いは主のものです。」
10節 主は、魚に命じ、ヨナを陸地に吐き出させた。
 
この2章にはその時のヨナの魂の叫び、瀕死の苦しみの中からの神への”祈り”が記されています。
ある人は、このヨナ2章を次のような区分しています。
 
1 2節   祈りの先取り・・・どんな逆境的な状況に置かれていたとしても、
神は祈りを聞き応えてくださったとする神への信頼と確信
2 3~6節 祈らねばならない現実、状況・・・海中での苦しみの経験
3 6~7節 祈りに対する神の応答
4 8~9節 祈りの勝利、決意、献身の約束
 
さて、私達は、このヨナ書2章から何を教えられ、学ぶのでしょうか。
 
(1)神様は私達に必要な苦しみを送られます。
   しかし、耐えられない程の苦しみは与えられないという事です。(Ⅰコリント10:13)
   神はご自身に不従順なヨナに大嵐という妨げを送りました。
   ヨナにとって、大嵐の中での海中での苦しみは、私達の想像を絶するものだった事でしょう。(5、6節)
   詩的描写が実にリアルです。
   “地のかんぬきがいつまでも私の上にありました。”
   地のかんぬきとは、自分の力ではどうにもならない厳しい絶望的な現実に封じ込められている様子です。
   いつまでも私の上にありましたとは、海中に沈んでいく時、意識が薄れ、苦しみの極限にある時、ほんの一瞬が永く感じられていたという事でしょう。
   実際には、1~2分の出来事でしょうが、ヨナにとっては、まさに永遠という単語を与える程に、限りなく永い時間に感じられたのでしょう。
 
コリント人への手紙 第Ⅰ 10章 13節
 あなたがたの会った試練はみな人の知らないようなものではありません。
 神は真実な方ですから、あなたがたを耐えることのできないような試練に会わせるような
ことはなさいません。
 むしろ、耐えることのできるように、試練とともに、脱出の道も備えてくださいます。
 
 
(2)私達が何か苦しい事に出会う時、その苦しみをどう考え、解決に向かって、どういう方向に向かうという言葉がとても大切な事です。
人が苦しみや苦難に遭う時、いくつかのタイプがあると思います。
① 苦しみの中でもがき苦しみ努力する、1章の船員達のようなタイプ
② 苦しみを運命と思い諦める、喜びや確信がないタイプ
③ 神の摂理、支配をどこまでも認め、神に救いを求めるタイプ
ヨナはこの苦しみを神様がなさった事として正しく受け止めました。(1:15、2:3)
 
同じ現実でも、信仰を持っている者と、信仰を持たず、神様から遠く離れて自分の道を歩んでいる者とでは、苦しみの見方や受け取り方が全く違ってくるのです。
ヨナの魂と肉体の苦しみが、極限に達した時、その自我が砕かれ、ヨナは祈り始めました。
ヨナは神の宮での礼拝の事を思い出し、神に祈ったのです。
ヨナの祈りは、自分の魂の叫びでしたが、また、詩編からの引用の祈りも含まれてあったようです。(詩編18:69等)
私達は聖書の引用をして祈っても良いのです。
イエス様の母マリヤもサムエルの母ハンナも祈り(Ⅰサムエル記2:1~10)を引用しています。
みことばには力があるのです。
 
詩篇 18篇 
6節 私は苦しみの中に主を呼び求め、
   助けを求めてわが神に叫んだ。
   主はその宮で私の声を聞かれ、
   御前に助けを求めた私の叫びは、御耳に届いた。
7節 すると、地はゆるぎ、動いた。
   また、山々の基も震え、揺れた。
   主がお怒りになったのだ。
8節 煙は鼻から立ち上り、
その口から出る火はむさぼり食い、
炭火は主から燃え上がった。
9節 主は、天を押し曲げて降りて来られた。
   暗やみをその足の下にして。
 
サムエル記 第Ⅰ 2章
 1節 ハンナは祈って言った。
    「私の心は主を誇り、
     私の角は主によって高く上がります。
     私の口は敵に向かって大きく開きます。
     私はあなたの救いを喜ぶからです。
2節  主のように聖なる方はありません。
    あなたに並ぶ者はないからです。
    私たちの神のような岩はありません。 
3節  高ぶって、多くを語ってはなりません。
    横柄なことばを口から出してはなりません。
    まことに主は、すべてを知る神。
    そのみわざは確かです。
4節  勇士の弓が砕かれ、
    弱い者が力を帯び、
5節  食べ飽いた者がパンのために雇われ、
    飢えていた者が働きをやめ、
    不妊の女が七人の子を産み、
    多くの子を持つ女が、しおれてしまいます。
6節  主は殺し、また生かし、
    よみに下し、また上げる。
7節  主は、貧しくし、また富ませ、
    低くし、また高くするのです。
8節  主は、弱い者をちりから起こし、
    貧しい人を、あくたから引き上げ、
    高貴な者とともに、すわらせ、
    彼らに栄光の位を継がせます。
    まことに、地の柱は主のもの。
    その上に、主は世界を据えられました。
9節  主は聖徒たちの足を守られます。
    悪者どもは、やみの中に滅びうせます。
    まことに人は、おのれの力によっては勝てません。
10節  主は、はむかう者を打ち砕き、
     その者に、天から雷鳴を響かせられます。
     主は地の果てまでさばき、
     ご自分の王に力を授け、
           主に油そそがれた者の角を高く上げられます。」